リウマチの治療について
特徴は?
関節リウマチの特徴的な症状は「関節の腫れや痛み」、「朝のこわばり」です。手首や手足の指の関節に多く、左右両側に対称性にあらわれることが多いです。
有病率は人口1000人に対し女性5.4人、男性1.1人と報告されています。発症のピークは30~40歳代ですが、60歳代からの発症も多く「高齢発症関節リウマチ」と呼んでいます。
どんな病気?
関節リウマチは免疫システムの異常が原因と言われています。
免疫とは細菌やウィルスなどの外敵を攻撃し排除するシステムですが、何らかの原因で異常を生じると、自分の体の組織を外敵と誤り攻撃しようとします。
このようにして炎症が起き、関節の中の「滑膜(かつまく)」が腫れてしまいます。増殖した滑膜がやがて関節を破壊してしまうのです。
どんなふうに進行するの?
進行は人により異なりますが大きく3タイプにわかれると言われています。
- (1)緩除発症型 あまり進行しないタイプ(全体の70%)
手や足の指などの小さな関節に変形を生じますが、膝や股関節などにはほとんど変化がなくほぼ自立した日常を送ることができます。 - (2)急性発症型 急速に進行するタイプ(全体の10%)
大きな関節にも関節破壊を生じ、様々な薬物治療を行っても破壊を止め得ないことがあります。
新しい生物学的製剤の登場により、このようなタイプもかなり進行を止められるようになってきていますが、進行すると「寝たきり」となったり、手術により関節機能を再建する必要がある場合もあります。 - (3)中間型 徐々に進行するタイプ(全体の20%)
(1)と(2)の中間的な経過をたどります。
このような発症型の分類以外にも、増悪・軽快を周期的にくり返したり、関節がグラグラになるものや、固まってしまうものなど様々なタイプがあります。
診断について
リウマチの診断は、症状、血液検査、X線所見、MRI等から総合的になされます。現在までに様々な診断基準が提唱されていますが、いかに早期に診断し、治療を開始するかということが重要です。
- ● アメリカリウマチ学会分類基準(1987)
- (1)1時間以上続く朝のこわばり
- (2)3個以上の関節の腫れ
- (3)手の関節(手関節、中手指節関節、近位指節関節)の腫れ
- (4)対称性の関節の腫れ
- (5)リウマチ結節
- (6)血清RF陽性
- (7)X線写真の異常所見
- 以上7項目のうち少なくとも4項目を満たすと診断される。((1)~(4)は6週以上存在すること)
- ● 日本リウマチ学会早期RA診断基準(1994)
- (1)3関節以上の圧痛または他動関節痛
- (2)2関節以上の腫張
- (3)朝のこわばり
- (4)リウマトイド結節
- (5)赤沈20mm以上の高値またはCRP陽性
- (6)リウマトイド因子陽性
- 以上6項目中3項目を満たすもの
- ● 厚生省研究班 江口ら早期RA診断基準案(2005)
- (1)抗CCP抗体またはRF 2点
- (2)対称性手・指滑膜炎(MRI) 1点
- (3)骨びらん(MRI) 2点
- 3点以上
- ● 2010 ACR/EULAR分類基準
- 関節病変の数、血清学的因子の有無、急性反応物質の有無、滑膜炎持続期間の程度などをスコア化して判定。
従来行われていた血液検査のRF(リウマチ因子)はすべてのリウマチ患者さんの70%しか陽性になりません。また特異度は70~80%と言われています。(RF陽性の人の20~30%はリウマチではない。)
平成19年春より抗CCP抗体検査が可能になりました。この検査はやはりリウマチ患者さんの約70%しか陽性になりませんが、特異度は90~95%程度と言われており、当院では初診時に必ず抗CCP抗体を測定しています。
治療法について
もっとも重要なのは薬物療法です。従来より多くの民間療法、サプリメント、鍼、灸などがありますが、医学的に効果が証明されたものはありません。
(1)非ステロイド系抗炎症薬
この薬は痛みと炎症を抑える速効性のある薬です。対症療法の薬と言えますが、長期間服用すると胃腸障害を起こすことがあります。
(2)ステロイド(副腎皮質ホルモン薬)
少量で炎症を強力に抑え、劇的に改善しますが、やはり対症療法的な薬と言えます。長期服用すると、骨粗鬆症などの副作用を起こしますが、投与量の調整が難しいのでやめる際には徐々に減量する必要があります。
(3)抗リウマチ薬
治療の主体となる薬で、免疫異常に働きかけ病気の進行自体を抑えるものです。色々な抗リウマチ薬がありますが、当院ではメトトレキサートをアンカー(支え -よりどころ)ドラッグとして第1選択としています。ただしどの抗リウマチ薬が効くかは人によって異なりますし、効き方も個人差があります。副作用を心配されることが多いですが、服用中は定期的検査を行うことが大切です。
(4)生物学的製剤治療
関節破壊の主な原因の1つである、サイトカインという物質の働きを抑える薬です。極めて高い効果があり、関節破壊の進行を防止することが明らかにされています。特に発症早期から用いると完全寛解に導入できる可能性があります。
当院での治療目的
- ● まずは早期にリウマチを診断して
- ● 積極的に抗リウマチ薬療法を行い
- ● 早期に関節破壊を抑制し
- ● 後遺症をくいとめる
「ステロイドは、最小限に、短期的に、限定的に」
「日常生活のアドバイスを行い、
リハビリテーションや装具療法なども提案」
「患者さんとよく話し合い、納得できる治療を心掛けています」
「治療費用の負担や、副作用の不安などを少しでも
へらせるように心掛けています」